秘密をきくということについて

(2016.5.24に生徒指導や相談業務をしておられる西三河の高校の先生方に対して「思春期の子どもへの理解と対応」という題で講話をさせていただく機会がありました。その内容の中から一部を掲載させていただきます)

カウンセラーの仕事をしていると、人の秘密を聴くことがけっこうあります。ここにおられる教員の皆さんも似たような立場におられるのではないでしょうか。生徒から秘密を打ち明けられる、とか。

生徒が何か秘密を打ち明けてきたときには、それがこころの面での深い傷の一端であることが少なくないと思います。その背景にどんなドラマが広がっているのか。そこに思いをはせることが必要だと思います。

例えば・・子どもが何か罪を犯したとする。皆さんにそれを打ち明けてきたらどうしますか。・・大人がそのときどう対応するかは、その後の子どもの人生に与える影響は大きいと思います。

ある小学生の子どもは自分の犯した罪について誰にも言えずこころの奥にしまいこむことになった。実際はそのときにことの重大さに気づいていた大人はいたが、見て見ぬふり、うやむやになってしまっていた。・・・何十年か後、その子は・・職場で人間関係がうまく行かないかもしれない・・または・・原因不明の発作に悩まされることになるかもしれない・・。これは今私が思いついたファンタジーで、実際あった話ではないですが、このようなことはこの世でたくさん起こっていると感じます。

なぜこんな話をしたか。そのとき、誰か大人がひとりでも、その子のしたことの意味を一緒に考えて一緒に傷ついて・・なんでこんなことになったのかと怒って泣いて・・そういう人がひとりでもいたら、何十年か後に何かがおかしくなるようなことはなくなるかもしれない。私はそう思うからです。

私たちが子どもに秘密を打ち明けられるということは、そういうことだと思っています。こういうことは私だけでなく、カウンセリング的なことをする立場にある皆さんにも起こり得ることだと思います。立場を越えた関わりがカウンセリングには求められています。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。