学校現場で働くということについて

(2016.5.24に生徒指導や相談業務をしておられる西三河の高校の先生方に対して「思春期の子どもへの理解と対応」という題で講話をさせていただく機会がありました。その内容の中から一部を掲載させていただきます)

自分の相談室以外にも今、2つの学校でスクールカウンセラーをしており、これで2年目に入ります。まだ学校というところがどういうところなのかもわからない、という感じです。「教育相談体制」とは何なのか。要するに教育の領域にどう臨床を取り入れるか。そういうことかと思っていました。教育という専門性を持った方たちに対していかに心理士の視点を入れて役立ててもらうか・・そこだと思ってこの1年、がんばってきました。

反省としてはがむしゃらすぎて、おそらく学校の先生方は私のことがうっとおしかっただろうということです。「私の仕事は心理の視点を入れること」とはりきって生徒の心理社会面の評価をしてきました。はりきってしまったのは、やはり自分に自信がなかったのだと思います。専門性のところ以前に、教育相談体制、その中での自分の立ち位置がわからず、つかめず、自信がなかったので、専門のところばかりで話をしようとする。結局生徒に視点が行っていなかった。とはいっても継続して会っている子は何人かいますので、そういう意味では生徒を見てはいるんですが、教育相談体制の中でどう働くかと考えたときに、自分の立ち位置にばかり目が行ってしまって、生徒のほうを向いていなかった。これが反省点だと思いました。

このようなことを考えるきっかけになったのは先日、勤務しているひとつの学校の相談員さんと話をしました。相談員さんというのはカウンセラーの資格を持たずに生徒の相談業務に当たっておられる方で、その市町村では各中学校に常駐しておられます。その方に、中学校という場で働くにあたって、先生方の間でどうふるまったらいいのかわからないと話してみました。

すると、別に立場とか、資格とかで自分は仕事をしているわけではない。自分は個性で仕事をしているのだと思っている。だから、資格のない私があなたに教えることもあるし、逆にあなたが私に教えることもある。その中に学校の先生も入る。いろいろなやり方があるし、同じ職種でも人と同じように自分ができるわけがないし、やり方が決まっているわけではないのだから、自分ができることでやって行けばいいのではと。

これをきいてほんとうにそうだなと思いました。自分は心理士という専門性でものを言おうとするから苦しいのだと。自分は個性で話をすればいいのだと思ったらすごく楽になりました。もちろんその中の一部には心理の専門性も入るわけですけど・・。あとは、「自分は専門家だから教える」という感じの縦の関係でものを言っていたと反省しました。これからは先生方と横の関係でお互いに、いろんな部分で感じる気持ちの部分を優先に分かち合って教育相談体制に入っていければと今は思っています。

教育相談体制の中で働くにあたって、1年経って、私が戸惑ったこと、今現在感じていることを最後にお話しました。なぜこんな話をしたか。なぜなら、ここにおられる教員の皆さんの中にも私と同じ教育相談体制の中で働く2年生の方がいらっしゃるかもしれない・・。もしそうなら、立場は違えど同じ2年生として共有できたことがあったかもしれない。今日のお話の中でもしそれができたなら、それが何よりうれしいと思い、この話を最後にさせていただきました。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。