心理士の視点

この3月で心理士になって5年になる。思うのは、心理士と言ってもにんげんのこころを外から見て測る心理士と、クライエントの主観に迫ろうとする心理士がいるということだ(どちらに重きを置くか、比重の問題と思いますが)。

発達障害の疑いがあると言われているお子さんがいるとする。例えば親御さん等に、そのお子さんに接する上でアドバイスをお願いしますと言われたとき、外から見た様子でそのお子さんの状態を測ろうとする心理士は、この子は言葉によるコミュニケーションが苦手な子です、なのでことばで指示を出すときにはゆっくり指示を出しましょう、一度で理解できなかったらもう一度指示を繰り返しましょう・・こういうアドバイスをするかもしれない。一方、そのお子さんの主観を理解しようとする心理士は、この子は何をするにも反応がのろかったり、ぼーっとしてよその世界へ行っているように見えますが、本当は、外の世界について行けず、見かけより混乱しています、彼の世界を理解し見守り、外の世界に橋渡しすべく「大丈夫よ」と声をかけましょう・・そうアドバイスするかもしれない。

私はどちらかと言うと後者のタイプの心理士だ。外から見た状態でにんげんを測るよりは、その人の主観の世界にできるだけ近づこうと努力する。だからその人を理解するのに、主観的な世界の表れである、箱庭や夢を手掛かりにする。

世の中の趨勢は外から見た見方でその人を理解して、その人が社会にどう適応するか。そういうやり方で測り、援助しようとするほうにあるように思える。スクールカウンセラーなどやっていても、そう思う。しかし、私は主観に迫るほうのやり方でやって行きたい。そっちのほうが、私にはピンとくるし、おもしろい。夢や箱庭に現れる、にんげんが主観的に感じていることも事実と呼べると思うし、人と接するときに知る必要があるのはそっちだと思う。

なぜなら人は他の人と関わってなんぼだと思うけれど、ほんとうのきもち(わかろうと思ってもほんの一部しか可能ではないけれど)を少しでも他人と共有することで、人間関係は広がりを持ったことになり、その後も他に広がっていく。私はそう思う。

とはいっても、外からこころを測る人たちともっと話をして協力して行けるといい。そう思っています。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。