主体性ということについて考える

先月仙台で開催された箱庭療法学会に参加してきた。今回の学会は遠方での開催ということと、前後の仕事のスケジュールもあり、一泊二日で、シンポジウムと研究会2つだけの参加となった。

そこで印象に残ったことを書こうと思う。

参加した研究会のひとつは、成人男性の夢に関する事例報告だった。守秘義務があるので詳細はここでは書けないが、社会性の未発達なクライエントの事例で、その方が主体性を獲得して社会に出て行く過程と、夢が併行して報告された。その方は大変個性的な方でもあった。

人間いろいろな個性があるが、心理療法で共通して言えるのはその方の主体性が問題になってくるということだと思う。個性と主体性は別物らしい。

主体性とは何かと問われても、少し前の私はぴんとくるものがなかったので何も答えられなかった。しかし最近は少し感じることがある。私には、主体性と社会性は2つの言葉の意味がかなり重なっているように感じるのと、心理療法ではその獲得過程が同時進行するように思える。

社会性という言葉の定義はいろいろあると思うが、人間が社会性を獲得していく上で必要なことは、ひとつは自分以外のことを知り、外から見た自分を知ることだと思う。主体性とは自分がどう生きて行くかを、そのためにどの場面でどうふるまうかということも含めて、選んで行くことだと思う。

この、社会性と主体性を獲得する過程で、私たちの夢のほうにも、自分以外のことを知り、外から見た自分を知る、この言葉を暗示するようなモチーフが出てくるように私には思える。今回箱庭学会の研究会で報告された事例についても同じような印象を受けた。

今後いろいろな事例を通して検討していけたらいいと思った。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。