スポンタニアティ

カウンセラーとして働いていると、親子関係に関する悩みをお聴きする機会は少なくない。思春期に人は誰しも親からの自立が課題となり、その時期を通過して大人になるものですが、大人になってからも自立の課題と向き合い続ける人も少なくないように思えます。

例えば、親のことを考えたり、話したりすると気持ちが混乱する。これは感情的に親からの自立が果たされていないサインのひとつといえます。とはいえ、誰しもこのような感情は経験することはあると思う。それが日常生活に支障をきたす程度まで・・となった場合に病的と言えるのでしょう。

生まれ育った家族関係に何らかの病的なものが含まれ、親子関係の整理ができていないと、余計なエネルギーを使うことにもなりえます。相手に対して怒るべきところで自分を責める等。そのパターンは大人になってからも継続して、例えば家族以外の人との交流において、感じなくてよい罪悪感を日常の対人関係で感じる。それはエネルギーを消耗することで、疲れることです。その結果動けなくなるような人もいると思われる。

このような状態が正常かと問われたら、正常ではないと私は答えると思いますが、そのような環境に居続ける状態がよいのかよくないのかと問われたら、私は答えを持たない。例えば、生まれ育った家族の影響を受けて築き上げられている対人関係のパターン、その中にいて、それを繰り返していたほうが、新しい人間関係に向かうより怖くないという人がいたとする。そのような人に対して、無理にそこから出ましょうと申し上げる気は、さしあたって私にはありません。しかし、人は猿や猫等の動物とは違う生き物なので、家族同士といえども互いに礼儀は保ったほうがいいと私は思う。このことは申し上げるかもしれない。ありがとうとごめんなさいは、家族だからこそ互いに、適切な場面で適切に言えたほうがいいと私は思う。

私自身、これまで、親がどういう人なのか、自分と親との関わりはどのようであったのかを考え続け、その時々の自分の居場所について、考えてきた。それが意味のあることなのかわからない。そういうことを何故考えてきたのかと問われても、24歳くらいから考えるようになったとしか答えられないから、わからない。私は自分のそういう傾向に添って生きてきた。

現在50歳を手前にして思う。結局、親の影響を、完全になくしたり、親の敷いたレールというものが仮にあるとして、そこから完全に自由になって生きるのは難しいと感じる。しかし、その中にあっても、自分にあるスポンタニアティー、自発性に耳をすませることが大切であると感じる。それは日々の夢や人との関わりを通じて、自分自身に問いかけることでみえてくるものだと思われる。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。