ソンディテスト

ソンディテストという投影法の心理テストがある。48枚のカード(8種類の精神疾患患者の顔写真から成る)を数枚ずつ提示し、好き嫌いで選択してもらい、その数を元に因子別に数値化し、例えばこの人はこの衝動が強い等で分析し、その組み合わせでパーソナリティを測るというものです。

カウンセラーになるにはまず、自分がカウンセリングを受けることが必要なのと同様に、心理テストをする場合は、まず自分がテストを受けてみるのが大事なことだと思う。私が初めてソンディを受けたのは大学院に在学していたころだった。授業の一環で院生同士でテストを取りあった。

大学院を卒業してから、しばらくはソンディテストからは遠ざかっていた。解釈が複雑そうだし、取ったところで使いこなす自信がなかった。名古屋のソンディのセミナーに2年ほど通ったこともあったが、そこから自分の臨床に取り入れようと言う気にならなかった。難解で、こちらの理解不足もあり、あまり興味を引かれなかった。テストに対して好みや興味の有無があるのは当たり前のことで、自分とソンディテストとの相性がわるいのだろうなとも思った。私にとって、夢や箱庭は(特に夢)面白い。人によって、面白く感じるものが違うのは当たり前だ。

さて、数年前の学会で、ソンディのポスター発表を見に行ったことがあった。ポスター発表は、ひとつの題目にひとつの教室を割り当てられて指定討論者や司会者を立ててする発表とは違い、書籍売り場や休憩所として使われるホールの一角でA0サイズくらいの紙で研究内容を提示する。かなりカジュアルなスタイルの研究発表です。するとそこに、ソンディテストの入門本等で名前を存じ上げていたある先生が、立って説明していらした(周囲の方がその先生の名を呼んでいたのでわかった)。そして、その先生のほうから気さくに話しかけてくださった。私は、ソンディは使ってみたいのだが、なかなか難解で・・と言うと、2、3ポピュラーな病態で例を挙げて説明してくれた。この病気の見立てをするには、このベクターさえ見れば割とわかるんだよ等。気軽に使える感じであった。ソンディは気軽に使えるのだなと感じ、使ってみるのもいいかもなと思った(が結局まだ使っていない)。

さて、今年の学会では大塚先生の会に参加した。大塚先生は日本でのソンディの第一人者で、私が大塚先生を直にみるのは13年ぶりです。久しぶりに拝見する大塚先生は外見的にはそれなりにお年を召されたなという印象だったが、口角泡飛ばして熱弁する、その勢いは少しも変わっていないなと感じた。「先達と語る会」という企画だったのですが、大塚先生はそこでソンディテストの各因子について説明された。その中で印象に残っていることがある。「よい臨床家というのは、この患者さんはこういう患者さんだとイメージができる人のことだ、ソンディテストやロールシャッハテストで」とおっしゃった。これば別に特定のテストを勧めているためにおっしゃってのではなくて、なんでもいいので得意とするところで、クライエントの状態像をつかめるようになったほうがいい、そういうことです。「自分は実践を自分のものにするのにソンディをやった」ともおっしゃっていた。実践を自分のものにするとはなんとも味わい深い言葉だと思いませんか。他にもいろいろ、先生の言葉は胸に刺さるものがあった。

つれづれソンディのことを書いてみた。こうしていろいろ書いていると、何をするかも大切ですが、何のためにするかということも大切のように思える。大塚先生の話をまた聴きたい。

この記事を書いた人

アバター

加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。