ほんとうのこと

ザ・ブルーハーツの曲に「シャララ」というのがあり、歌詞の中に「大変だ 真実が いかさまと 手を組んだ」という部分がある。その後歌詞は、「誰か僕に 約束の 守り方 教えてよ」と続く。このように、「真実」がいかさまと手を組んだ場合、大変になると思われる。

臨床をしているとこの「真実」が問題となる場合が、ときにみられると感じる。「真実」にはいろいろあると思いますが、私はある場合にはそれは、親から子へ、伝わる何かのことを指すのかもしれないと感じる。父には父の、母には母の真実がある。その2人が結婚すれば、結婚の真実がある。その根底に流れる「ほんとうのこと」。これは結局、本人が自分で物事をよく見てつかみ取るしかない。お父さんやお母さん自身にも、わかっていない場合があるからです。それに、人から言われて、腑に落ちるものではない。あなたはいったい、何から生まれたのですか。それで、どこへ行こうというのですか。自分で考えないといけない。

自分と他人は違う人間で・・そう気づくのは小学校低学年くらいだという。その前段階で、子どもは親と同一化し、万能感が出る時期がある。これがエディプス期であります。万能感が出るエディプス期を十分に体験していないと、子どもはその後の自分と他人の区別をつける時期にうまく移行できない。十分にその時期の課題において満たされるべき欲求が満たされない限りは、次の段階に移行できない、だから、エディプス期の課題を持つ児童のセラピーとしてはまずは、温かく許容的な雰囲気の中で、思う存分のびのびしてもらうのがよい。そういう考え方は私の中にある。

大人になってから、この時期の課題に取り組む人もいる。エリクソンも言っているが、発達課題は、常にどの段階の課題も内在していて、ある時期それが優位になるにすぎない。全ての大人が、全ての時期の発達課題を多かれ少なかれ内在している。

臨床で問題となる「ほんとうのこと」。私たちにとっての、ほんとうのこととは何なのか。動物としての生き方も含め、自分の抱えている課題に向き合い、礼節を保って歩んでいくことではないか。私にはそう思われる。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。