私は中学と大学が水泳部だった。中学も大学も種目はバタフライを選んだ。バタフライはその名の通り両手を蝶が羽ばたくように動かして泳ぐ種目で、動きが派手だ。他の種目に比べて体力を使うので、練習はきつかった。それなのにそれを選んだ。理由は「他に泳ぐ人がいなかったから」と言っていたが、果たしてその理由だったのかと疑問が湧いてくる。
スポーツなどのクラブに所属すると、何かしら役割を選ぶことになる。チームプレイの種目だったらポジションがあるだろうし、陸上や水泳などの個人種目でも、その中で細かく種目に分かれる。皆その種目をどうやって選ぶのだろう。もちろん、チームの中のバランスもあると思うが、適正で選ぶ場合も多いと思う。水泳でも短距離が得意な人と、長距離が得意な人はいる。それは体形や運動能力にも左右される。
私は瞬発力もないし、運動能力も高くなかった。一方、持久力と冷静にペース配分するのは得意だったと思う。だから、本当はクロールの長距離を選んだら、もっとタイムも伸びたり、違った楽しみがあったように思える。それなのにバタフライを選んだのは、目立ちたいとか人と違ったことをして周囲を驚かせたかったのかもしれない。
思い起こせば、私の、周囲を驚かせたいという気持ちは幼少期からあったように思える。あれは私が4歳だった時の、父の会社(18年後に私も入社することになる)での文化祭でのできごとだった。当時は家族も文化祭の時には会社の構内に立ち入ることができ、社員の方が出店など出していて、そこでから揚げなど買ったり、手芸教室などに参加した。その時に、200人くらい入れる小さなホールでカラオケ大会が開催されて家族で見にいきました。舞台では飛び入りで参加された方々が何人が歌っていました。そして最後のひとりとなり、司会のお姉さんが「それではこれで最後の1人ですが・・」と会場に募ったときに突如手を上げたのが私でした。そして檀上で「ぶんぶんぶん・・」と歌って(この時には蝶(バタフライ)でなく蜂が飛んだのでした)、みごと優勝し、普段の大人しくぼーっとした私を知る家族を驚かせたのでした。
こういう人をびっくりさせるようなところは母方祖父から受け継いでいると思う。母方祖父は真面目な理科の高校教師だったが、定年後にマジシャンになった。小さい頃に祖父宅に遊びに行くと、祖父がステッキを空中で躍らせたり、ハンカチから鳩を出したりしてみせ、びっくりして見ていた記憶がある。母にもこういうところがあって、昔婦人会の役員をしていた時に、地域の盆踊りで突然、ドジョウ掬いの仮装をして普段の母を知る親戚一同をびっくりさせた。一見大人しく、他人にはわれ関せず、マイペースを守りたい性質にもみえるのですが、ときどきこういう風になる。
結局祖父も母も私も、やり方は下手だが人と関わりたいんだなと思った。自分が疲れる場合もあるし滑稽に見えるところもあるけれどこれが自分だからしょうがない。人に迷惑をかけないように気を付けながら、これからもこんな感じでやっていくのかなと思う。