臨床の仕事

臨床心理士という職業があることを知ったのは、24歳のときで、私はその頃は会社で事務員として働いていた。

この時に読んだ、ユング心理学を解説した本には、人間には普段自分が、こころだと思っている意識の領域の他に無意識の領域があり、自分の中には、まだまだ未知の領域がたくさんあるということが書かれていた。 

自分がコンプレックスを感じるあの人の、ある性格的な傾向、実は自分の中にも、同じような傾向はあり、未分化なだけで伸ばしていくことができると書いてあった。

人の中には個性を極める(個性化)傾向がある、無意識と関わりを持ち、個性化の傾向に従っていれば、自分の嫌いなあの人ともどこかでつながれる。このようなことも書かれていた。

弱い私はこの世を生き抜く武器がほしかった。心理学を身につけることで、強くなれるかもと思った。

このようにして入門した心理学の道、まずは自分がカウンセリングを受けることにした。ユングもそれが必要と、表現は少し異なるが、本に書いている。しかし実際やってみたら、思っていたのと違い、簡単ではなかった。

私は嫌なことがあると、人のせいにして文句を言い、頭で考えて詰め込んだ知識で、自分のことを理想で思い描くことが、自分を知ることだと思っていた。ところが、自分を知ることは、自分の中にある認めたくないネガティブな部分に目を向けることでもあり、気持ちのよいことばかりではなかった。

今は、自分の中にネガティブな部分があることは悪くはないと感じる。あと、嫌いな人とつながるというのは、人によって感じ方は違うのだろうと思う。私の場合は許すというか…

今私は、24歳のときには思い描くことのなかった景色を見ていると感じる。それで、自分が今立っている場所をひとつの点として想定してみる。さしあたり、この一点に立つまで、たくさんの話をし、いろいろなことが起こり、たまに何かが腑に落ちることもありました。

そして、今度は、私がこの一点に居続けることが大事である、そういう気持ちが自然とわいてくるのでした。これが今の私の心境です。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。