職人の技

先日温泉旅行に行った帰りにある場所で急に思い立って電車を降りて、観光してきた。その町は、明治時代には養蚕や製糸産業がさかんな街だたとのこと。観光案内所でたずねると、歩いて30分ほどのところに、博物館があってそこを目指して歩いて行くと、途中古い町並みが眺められる。そういう説明を受けた。それでその通り歩いていくことにした。駅から5分も歩けば蔵のような古い建物が続く場所に出て、おしゃれなアパレルが売っているお店もある。すぐに猫もいた。

町で見かけた猫

しばらく歩くと、明治時代に建てられたという家がいくつか立ち並ぶ通りに出た。入口には説明入りの立て看板があって、中も見られるようになっている。昔の様子を偲ぶことができた。途中みかけた町家づくりの古い家は、今は何かの店として利用されていた。道路の拡張のために、家を60メートル移動させたらしい。家は動かすと傷むと聞いたことがあったが、実際見るとそれはそうかもしれないと感じた。それでも心惹かれて行きも帰りも写真を撮った。

道路拡張のために移動されたという明治時代の家屋

またしばらく歩くと目的地に到着した。そこは江戸時代から続く豪商の家をそのまま博物館にしたもので、中に展示してあるものはすべて、この家の所有物やコレクションで、江戸時代から現代まで続く。雛人形、食器、家具、着物まで展示してあった。建物から建物へと移動する最中には、江戸時代の藩主が秘密に訪れるための扉まであった。このあたりでいかに力があったのかがわかる。その扉を横目に見て進むと、見事な庭に出た。そして看板には「200年前の浅間山の大噴火の際の天明の大飢饉のときに、民の救済を兼ねて京都から庭師を呼んで造った」と書かれていた。

さて、このブログの題名は職人の技という題で書き始めたのですが、何が言いたかったかというと、この博物館で一番心打たれたのは、藩主をおもてなしした時の御膳や食器のディスプレイ、飢饉時に京都から庭師を呼んで造った庭でなく、伊万里焼の小さなお皿であった。それはガラスケースの中にひっそりと納まっていたが、凛としてそこにあった。作った人のこころがそこに感じられた。こころとは何かといえば、不確かでよるべない日常で自分が保つべきプライドかなとその時には思った。この機にいまいちど自分のプライドについて考えてみたいと思った。

小皿(博物館内・撮影フリー)

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。