生きてほしい

昨日檀渓心理相談室で開催された、小倉清先生のセミナーに参加してきた。例年この時期に開催されるセミナーで、今年で10回目くらいの参加となる(おそらくそれ以前から開催されていたと思われる)。今年は前半が小倉先生の講話で、後半が事例検討だった。

今回の講話で印象に残ったのは、人生で生まれて3歳くらいまでが、最も苦しいときなのではないかという話です。赤ちゃんが思うように期待が叶えられるなんて絶対ない、人生でいちばんきついときがこの3歳までではないかと。そして、生まれてから3か月に体験したことが私たちの記憶に残っていて、私たちの一生に影響するのではないかと。赤ちゃんの欲求は果てしないので、お母さんが全てそれを叶えるのは無理なことだと思うので、確かにそのとおりなのだろうと思う。

小倉先生の語りは迫力があり、すごい話だと思った。そして今の私に必要なのは、自分がこの時期にどういう体験をしたか、できるだけ正確に思い出すことだと思った。

ただ、今も同じようなことは自分の身に起こっているなという実感はある。こういうことがきっと3歳以前にも繰り返されていたんだろうなという場面は現在の日常の中でもある。私は分析を受けたおかげでほんの少しではあるけれど、それを客観視できるようにはなった。もっと思い出せるといいと思う。私は心理士だから。

他に小倉先生がおっしゃったことで印象に残っているのは、「3歳でものごころつく、これは以前は体験を受けるしかないけれど、こっからは違うぞということではないか」と。自分の人生を振り返ると16歳くらいからあまり楽しくなかったが、昨年くらいから少し光が見え始めている気もしている。昨日の講話では小倉先生は多くの時間、わたしたちの日常生活にも大いに関係するような問題をいくつか挙げられ、悲観ということばで表現してもよいような現状(個人レベルから法律に至るまで話は及んだ)について語られた。ただ最後に「3歳までの苦しい経験、これに意味がある。これがなかったらその後の人生が生き抜けない」とおっしゃったのが救いであった。私にとっては、最近になってやっと、3歳までの経験の意味がわかりつつある。これまでの人生はただその中に呑まれて混乱していただけのように思える。これも教育分析を受けたおかげと思う。

だからといって残りの人生が楽になるとは思わない。ただ小倉先生からは私たち後進に向けて「生きてほしい」というメッセージが伝わって来た。教育分析のおかげである部分ではやっと3歳を抜けつつある私がこのタイミングで、小倉先生の話を聴くことができてよかった。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。