セラピストの姿勢

先週の日曜にある研究会で事例発表を聴いた。問題を抱えて来談したのは子どもだったが、家族全員を面接する、そういう方法を取っているセラピストの事例だった。途中家族の箱庭も夢も紹介された。家族の箱庭も夢も、それぞれ互いに影響しあっていることがわかって興味深かった。

箱庭と夢のシリーズを見ていたら、家族のうちのどのメンバーがセラピストとどの程度の転移(深い関わりのようなもの)が起こっているかわかった。そして、私がその人のセラピーについてはけっこう知っていると思っていたそのセラピストが、普段「セラピー」の中で、何をしているのかも。

事例を聴きながら突然、面接室が宇宙に漂っているのが見えた。いったい事例の中のクライエントは誰と話をしているのか。私はその中にいるクライエントとセラピストを頭上から見ていた。おそらく、私も宇宙に漂っていた。

事例の中で最後2つの箱庭を見たときには、この感覚が離れなくなった。これがユングの言う元型(歴史や種を越えた共通認識のようなもの)レベルの転移というものか。

同時に思った。私は自分の見る夢に、クライエントの作る箱庭や夢に一喜一憂しすぎていた。私の夢や箱庭の解釈には、セラピーには自分が入り込み過ぎていた。おそらく、セラピーというのはもっと自由で、クライエントとセラピストの自我以外のものに支えられて動かされているということだと思う。例えば私がセラピーしているときにもどこかで、私とクライエントを頭上から見ている目があるかもしれない。(↑以上、あくまでも、イメージとしてこういうものを持っておくのも悪くない・・という話)

今回研修に参加して、セラピストの取るべき姿勢は、いつでも自分が話が聴ける準備があること。それをクライエントに示し続けることでしかないなと思った。研修で感じたことを今後の臨床に生かしたい。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。