カフネ

1月に学生時代の部活の友人たちとの集まりがあり、その時には名駅の高島屋前の金の時計の下で待ち合わせをした。その仲間の交流が再び始まったのはつい、半年くらい前の事で、それまで30年近く交流の無かった友達もいた。その日、待ち合わせ場所に小説、「カフネ」を小脇に挟んで登場した友人がいたが、その友人もそういう中の1人だった。「カフネ」は阿部暁子さんの書いた小説であり、本屋大賞を受賞した作品とのことだった。その後移動した居酒屋で皆で咲かせた話の花の中で、再びこの本について話題が出ましたが、どうやら何人かがこの本を読んでいるようでした。何人もが読んでいるなんて、そんなに面白いのか・・。

それで私も読んでみようと帰ってから近隣の図書館で予約し、順番待ちを経てやっと手に入ったのが先週のことだった。それで読み始め、今まだ途中ですがやはり面白い。カフネとはポルトガル語で、愛する人の髪にそっと指を通す仕草のことだそうな。これってやさしさのことですよね。作品の中のやさしさの描写が細やかで、読んでいて涙が出る。

さて、「カフネ」を持って待ち合わせ場所に登場した私の友人は、本の題名と同じく優しいキャラをしており、学生時代の部活の初めての遠征、まだ入学したばかりの5月末くらいであったが、思いのほか遠征先の東京の気候が冷えて、薄着の準備しかなく現地で寒い思いをしていた自分に、「これ着なよ」と上着を貸してくれたことが思い出される。

ちょっとした優しさにより、人は前に進む力を得たり、支えられるものだ。そういえば亡き師匠も、かつてご自身のブログにそのようなことを書いておられた。師匠は新婚時代に奥様と京都に越し、まだお金がなく住む家もなく困っていたとき、知り合いの先生の奥様の世話で、ある方の家の2階に住まわせてもらうことができたということでした。その家主?に師匠は数十年後にある場所で偶然出会うこととなったのでした。師匠はブログの記事を「人の暖かいつながりはこうして人に伝わっていくのだということを実感しながら今思い出してこれを書いています」と締めくくっている。興味のある方は、檀渓心理相談室のブログに掲載されていますので読んでみてください。(2011/12/2の記事です)

ただ人は時に、人に優しくしたくてもどうしても自分を優先したいこともある。自分に対する優しさと、相手に対する優しさが、どうしても両立しない場面に立った時、人は苦しむことになる。

このような時には、まずは自分に優しくすることだと思う。自分に優しくしない限り、人には優しくなれないのではないか。周囲を見ていても、自分に優しい人は他人にも優しい。しかしそもそも私にとって、自分に優しくすること自体が苦手のように感じられる。←こういう人はどうするのか。

思うに、自分に対しても他人に対しても、差し出すものは、優しさだけではないと私には思われる。要は何を以て自分が生かされているのか、しっかりつかんでおくことが重要と思われる。個別性。結局それが人を生かすのだと思われる。そしてそれにはお互いに配慮し合わないといけない。優しさって、こういう節度と信頼の事かと思う。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。