先生は私の何を信頼してくれたか

お世話になっている先生の相談室で毎年、新年会が開催される。参加メンバーは30人くらいで、知らない人が半分。おそらく、先生の教え子の方もいるし、研究会に参加されている方もいる。子どももいれば、外国からみえる方もいる。

ところで、先生は昨年12月に80歳になられた。そこで今年の新年会は先生の80歳のお祝いを兼ねることになった。

会場に着くとすぐに、先生からのリクエストで、普段皆さんから見て自分(先生)がどう見えるか書いてほしいと紙と封筒を渡された。会の途中で先生にお渡ししますと。改めてこういう場でこういうことを書いてと言われると戸惑う。会で皆さんの前で読み上げたりするものなら、ウケを狙ったほうがいいのか、真面目に先生の特徴を書いたものか・・と考えて書いたけれど結局、感謝のメッセージになってしまった。他の人はどうしたんだろう、リクエスト通り先生が普段どう見えるか、先生の特徴を書いたのだったら、自分の書いたものは、心がこもりすぎて、読まれる段にでもなったらちょっと浮いてしまうかもしれないな・・。そう思って会が始まった。

先生へのプレゼントタイムに続いてその紙が読み上げられる時間になった。そうしたら思いのほか皆さん先生に対する感謝のメッセージになっていた。やはり自然とそうなってしまうのでしょう。どれもこころのこもったメッセージだった。私は今まで先生がずっと、自分のことを信頼し続けてくださったこと(自分で言うのもなんだけれどかなり大変だったと思う)に対する礼を伝えたかったので、それを書いた。

ところで、先生は私の何を信頼してくれたのだろう。先生が人を信頼するというときの姿勢は、「ありのままの受容」とか「共感」とかは超越している感じがする。先生が信頼してくれたのは、私が自分の道を歩む力を持つこと。それかなと思う。たぶん先生には自分に歩んで来られた道があるのだと思う。先生の歩まれてきた道がなんだったのか、そしてこれからどのような道を歩もうとされているのか、よくわからない。それに私は、自分の道が何か、まだよくわからない。ただ、自分の道を歩いて来た人は、人の道を信じることができると思う。だから、私もそういう臨床家になりたいと思う。

立科にて 2017.1

この記事を書いた人

アバター

加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。