キレ芸

キレ芸と呼ばれるものがある。会話の最中に突然キレて、笑いをとるものです。私は、ある芸人さんのキレ芸を見るとこころがざわざわする。ざわざわに気を取られて笑うことができない。その芸人さんが先日テレビに出演していた。

さて、先日「吾輩は猫である」を読み終わった。最後の11章は、それまでの10章で感じた娯楽を感じさせる色彩と異なった、暗い内容が含まれていた。漱石の皮肉な側面の表れであろうか、例えば、未来には人間の死に方はこうなる・・とか、個性中心の世が発展したら社会はどうなるか・・とか、未来の結婚について・・・とか。その中にちょうど、芸について書かれた部分があった。そこで言われていたのは、「芸術が繁盛するのは芸術家と享受者の間に個性の一致があるからだ」ということだった。

・・個性の一致とは何だろう。うわべの一致を探せばいくらでも見つかるかもしれない。「吾輩は猫である」の中に出てきた、登場人物たちには、それぞれの個性はあるものの、共通に底に横たわるのは悲しみだと書かれていた。例えばカンニングの竹山さんのキレ芸には笑えるのに、あの芸人さんのキレ芸に笑えないのはなんでだろう・・・

笑いとは対象のことが客観視ができて成り立つものだと思う。例えば自分に取って辛いことも、距離を取って客観視することで笑いに変えられることがある。あの芸人さんのキレ芸を見るとこころがざわざわして笑えないのは、私が自分の中にある何かを客観視できていないからかもしれない。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。