小学校1年のときに読んだ童話集の中で特に印象に残っている話があった。それは、父を亡くした女の子がある日、ひとりで海辺で貝殻を拾って遊んでいると、そのうちのひとつに小さな文字で電話番号が書いてあるのを見つけた。家に帰って電話をかけてみると、女の子の声で「(海の中の)エボシ岩の下の雑貨屋です」と。一日ひとつでよいのでハッピーなできごとを教えてほしい、そうしたらその雑貨屋の何かと交換してあげるからという。主人公の女の子(ミキだったと思う)はそれから、うれしいことがあるとその雑貨屋に電話をかけた。例えば子猫が生まれた等。真ん中あたりのあらすじは忘れましたが、ミキはその海の中にあるエボシ岩下の雑貨屋を訪ねて行って、シマダイみたいな服を着た女の子に会いに行ったりして・・ある日その喜びは積りに積もって、ミキの家を温かく照らすオレンジ色の電灯となりました・・というお話だったと思う。この本に収録されていた童話はどれも面白かったのですが、その中でも特にこの話が印象に残っている。
もう一冊印象に残っている本がある。それは、「エースをねらえ」を描いた、山本鈴美香さんが描いた「H2O前代未聞」というマンガだった。内容は、主人公の女の子が現実の世界と夢の世界を行き来する、というものです。夢の世界では、聖書の創世記に出てくる天使か悪魔?の指令に従って、クレオパトラや源氏物語の紫の上などに会いに行く。指令を終えるまでは(悪)夢から抜け出ることはできない。そしてその指令とは、その人たちの隠されたホクロを探し出して秘密を読み取るというものであった・・(!)。これは確か小学校3年生か4年生のときに読んだ。
2つの話に共通してあるのは、異界とつながるということと、何かを集めると、最後に得るものがあるというテーマだったかなと思う。主人公が海の中の雑貨屋をたすねていく童話のほうは、喜びを集めたら最後に家庭を照らすライトを手に入れることができた。「H20前代未聞」のほうは、夢の世界から抜け出るためには、隠されたホクロの情報を集めなければならなかった。
しかしもう少し考えてみると、大切だったのは手に入れたものではなくて、そこまでのプロセスだったのではないかと思う。童話の主人公の女の子はシマダイみたいな洋服の女の子とハッピーなできごとについて話をすることが必要で、「H2O前代未聞」のほうは、主人公の女の子は夢の中に入り込んで、過去の重要人物の人生をたどることが必要だった。
大切なのはプロセスで、何をするかよりもどのようにするかが大切なのだと思う。おはなしの世界に限らず、人の心に重しのように残るとしたら、そして本当に大切で受け継がれるべきものは、そういうとこかと私は思う。