他職種とともに働くということについて

私は開業心理士だが、週に一回は地域の中学校でスクールカウンセラーとして働いている。先日はその関係で西三河スクールカウンセラー連絡会議に出席した。西三河のスクールカウンセラーと先生方でスクールカウンセラーの活用について話し合う会議だ。

スクールカウンセラーは学校現場に入って、自分の専門性を発揮していくことが求められる。学校の動きをよく見ていないと浮いてしまうし、学校の動きに合わせすぎるとせっかくの専門性が発揮できない。

異なった専門性の中で働くということは、今までもしてきたことだ。過去に3年ほど病院の入院患者さんのメンタルケアに従事していたことがある。メンタルケアといっても精神科のない病院だったので、スタッフに対する助言が主なものだった。「この患者さんはこのようなことでお困りなのでこのように接してさしあげると入院生活がスムーズになるでしょう」というようなことを評価し、看護師さんや理学療法士さんなどにお伝えしていた。

しかし、他の職種の方に助言するのは難しい。初めのころは、というより今でもそうだが、自分の思いばかり話してしまう。たとえば少し気持ちに落ち込みがある患者さんに関して、理学療法士さんに「この患者さんには今は落ち込みがあるから、あまり厳しい訓練はしないほうがいい」等。しかし他の職種には他の職種の見通し方がある。理学療法士さんからすれば、歩けないのが気持ちの落ち込みにつながっているから、まずは訓練が第一だという見通し方がある。どちらが正しいとは言えない。

それぞれが専門性を持つ。これはあるものを追求していく姿勢とも言える。心理士は患者さんを癒すために臨床心理学を追求する。理学療法士は患者さんを癒すためにその専門性を高めて行く。その姿勢こそが患者さんを癒したり、影響を与えて行くという点では変わりない。

しかし追及する先は結局違う。自分の中にあって、それに向かって追求していく先はそれぞれの専門性によって異なる。そしていくら私が理学療法のことを学んでも本当の意味ではわかりようがない。それを選んで生業にするということは、結局そういうことだと思う。そして究極的にはその差異を認識するところからでないと、互いの尊重は生まれないように思える。

専門性が違っても互いに患者さんのことを思う気持ちは共有できる。そこでつながっていくしかない。そう思っていたが、今考えるとそれ以前の問題で、根本的なところで私は他職種の尊重ができていなかったように思える。つまり私は、他職種の方との差異が認識できていなかったように思え反省される。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。