父の死

父が平成28年6月10日に亡くなった。日付が変わってすぐだった。

元々肺がんを患って治療中だったが、急変によるものだった。物が呑み込みにくくなったので、ちょっと治療をと前日夕方入院。病院で出た晩御飯をほぼ完食。直後に大量に喀血し、気道がふさがり低酸素状態になり脳梗塞になった。肺か気管の動脈に近い血管からの出血だったようだ。そこから6時間後に心臓も止まった・・。その日にも三味線の稽古に行く予定だったほどで、家族にとっては急な話だった。

その日私は中学校でスクールカウンセラーの勤務だった。勤務を終えて中学を出たのが夕方6時。出るときに駐車場頭上の高い木の上でカラスが二羽しつこく鳴いて騒いでいた。あまりにもしつこいのであれはなんだったのかと校門を出てから車の窓をあけて確認したら、同じ場所でまだ同じように鳴き続けていた。少し走ったところで、依佐美の庚申塚のあたりでカラスの群れが道沿い電線に列をなしてとまっていた・・。買い物をするのに家の近くのスーパーについたのが6時半くらい。父が病院で血を吐いたのはちょうどこの時間だったと思う。家に着いて夕飯を作っていたら弟と母から電話が入った。すぐに病院に来るようにと。病院に着いたときには父の意識は既になかった。

父が亡くなる前の日父の生家では、いとこ(父が高校生のときに生まれた)が庭で洗濯物を干していたときに地面で小さな茶色の蛇がとぐろを巻いているのを見た。それは今にも死にそうな感じで弱っていた。少し経って同じ場所に行ったら、蛇が逆向きになって息絶えていた。夢でもよく言うけど蛇が死ぬなんてよくないからやだねと、叔母と2人で話したとのことだった。父が亡くなった直後しばらくは、(変な話ですが)、父の最期のどんな記憶よりも、唯一いとこの話してくれたこのエピソードだけが、父が死んだことを実感させてくれた。

父の葬式の次の日は朝から一日クリニックでパートだった。勤務を終えて裏口から外に出ると、夜7時を過ぎているのに外が明るくてびっくりした。夏が来た、季節が変わったのだと思ったら涙が出て来て、やっと泣くことができた。

今でも仕事の行き来で週に2回は依佐美の庚申塚のあたりを通る。そこにたむろしているカラスを見るたびに、お前は喪中なんだよと教えてくれているような気がして、ほんの一時でも自分を取り戻すことができる。

この記事を書いた人

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加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。