カウンセリングをしていると、逆転移が起きることがあります。逆転移というのは、カウンセラーがクライエントの方に対して抱く、様々な感情のことです。カウンセラーも人間なので、これが起こることは私はしょうがないと思う。
ユングは逆転移を避けられないものとして、そして治療的に働くものとして考えました。しかし、カウンセラーがやみくもに感情的に反応しているだけではセラピーになるわけはありません。ユングの言うように「逆転移が治療的に働く」ためには、カウンセラーの側に、人間の心に関する広い知識と、経験と忍耐、客観性と判断力が必要だということは言うまでもありません。
ところでこのところ、自分の中で逆転移が課題となるようなケースが多いように感じる。例えば、日常で子どもに対して「かわいい」と感じるのは誰でもよくあることだと思います。しかし、セラピーの場では、ある子どもに対してはこのような感情は治療的に働きますが、ある子どもに対してはそれが裏目に出ることがあります。それは子どもの発達のようすや、キャラクターの違いにもよります。子どもを支援する立場なら、どのようなものでも同じだと思いますが、子どもに接するときに、「かわいいかわいい」という思いだけで接していては、子どもの成長にはつながりません。これはひとつの例えですが。
私はカウンセラーなので、ただ感情的に反応しているだけではしょうがない。自分の中に沸き起こる感情を、治療的な意味に変えていく必要があります。それにはどうしたらいいのか。
つきなみだけれど、相手本位で考えることだと思う。私の中のこの感情は、相手にとってどういうものとして受け取られるのか。どういう意味があるのか。これは治療的に働くのか。それとも単なるカウンセラー側の自己本位な感情の表現としての意味しか持たないのか。これらを冷静に見極める必要があると思います。そのためにはクライエントの方の興味関心はどこにあるのか、そしてどこへ向かおうとしているのか、状態をしっかり捉えることだと思います。
私はクライエントの方が「これしかなかったのだ」と言えるような、自分の生き方ができるようになるのがいいのではないかと思っています。そのためにカウンセラーである私はどうあるべきか、何ができるか。逆転移の課題も、それを基点にして考えて行こうと思っています。