すぐに見通しを立てたガール

河合先生の著書である、「心の処方箋」の中に、「イライラは見通しのなさを示す」というエッセイが収録されている。

河合先生が言うには、イライラする側の内面に、何かしら欠点のようなものがあり、それが相手に投影されて、イライラするわけだから、自分の中のイライラに見通しを立てたほうがいいという。例えば、夫婦が互いにイライラする時には、何か自分の中にある欠点を、相手の中に見出し、それでイライラしている場合があるということである。具体的に取り上げられていた例は、話し方が遅い夫がいて、妻がそれに対してイライラしていた。実は妻の中に、先延ばしにしていたことがあったのだが、それを夫に投影して、イライラしていた・・そういう例がエッセイの中で取り上げられていた。

河合先生が言うには、『イライラは、自分の何かー多くの場合、何らかの欠点にかかわることーを見だすのを防ぐために、相手に対する攻撃として出てくることが多いのである』 とのことです。加えて河合先生によると、『自分だったら 「イライラするのは、何かを見通していないからだ」と心の中で言ってみて、イライラを直接に相手にぶっつける前に、見通してやろうとする目を自分の内部に向けて、探索してみるだろう』とのことです。

また、箱庭や夢には時に、「私の中にあるのはこれね」というような、イライラを象徴するようなものが置かれたり出てくる場合もある。箱庭に置かれるということは、自分の中にある、というような捉え方も可能と私は考えますので、それを自分で視覚的に目の当りにできるわけです。そうなると、相手のせいばかりにはできない。上の例でいえば、例えば、箱庭にナマケモノや亀が置かれるようなものか。亀と言えば、ゆっくり進む代名詞のようになる場合もあるが、ある人はそこに女性的なものを見る人もいた。地を這う生物として、具体・現実の象徴とも言えるし、前進の方が得意である。水陸両方行けるという点においては、箱庭に置かれれば、違う世界からやってきたものという捉え方もできる。他にもいろいろな見方がある。また、亀に何かが結びついているような場合もある。このように少し距離を置いて、自分の内面を客観視することができる。また、時間を置くことにより、イライラの内容に新たな視点が加わることもある。

何にせよ、物事は、いろいろな面を持つ。箱庭に、一見ネガティブなものが置かれたとしても、そこには良い面もある場合が多い。ただ、すぐに「これはこう」と楽観的に良い面を見だすことは、サイコセラピー的には意味がないようです。そこに何かしら、「ポジティブ」な面を見だすには、時間がかかる場合が多い。

・・ここまで書いてみて、私の中に、相手の中にすぐに見通しを立てたがる、見通しを立てたガールがいることに気づく。これは、自分の内面に関しては見通しが暗い部分が多々あるにも関わらず、「あなた見通し立てないかんよ」と、せっかちに短絡的に相手に言いたがる、やっかいな存在である。加えて、このガールには別のコンプレックス(父方に起因)も、どうやら結びついているようにも思える。今年の私の目標のひとつは、私の中に存在する、このガールと上手につきあっていくことと思われる。これもまた大変そうである。

参考:河合隼雄, 「心の処方箋」 

この記事を書いた人

アバター

加藤 理恵

臨床心理士・公認心理師
カウンセリングルーム はるき カウンセラー 

(株)デンソーを退職後 心理系の大学院を修了し、39歳で心理カウンセラー
42歳でカウンセリングルーム はるき 開室。
ユング心理学を背景に持つ、夢分析 箱庭療法を得意とし、主にうつ、不安、対人関係に関する悩みの相談にあたっている。

過去に、精神科クリニック 産業領域(トヨタ車体(株)) 愛知県教育委員会スクールカウンセラー(中学校) 等でのカウンセラーの経験がある。