私には思い出の地があって、昨日はそこに行った。そこが何なのか、ひとことではいえない。わけがわからないままにも、ひたむきに生きていた、愛すべき自分がいた・・とでもいいましょうか。その終着点とも言えるような場所がまた、一か所あって、今日はその場所のことを書こうと思う。
そこには欅の木が一本植わっているが、木の形はそんなによくない。広場を挟んで向かいにベンチが3つ並んでいる。中央のベンチと一番右のベンチの間、中央のベンチに座って手の届くくらいのところには、別の木が植わっている。
欅の木からは蝉の声が聞こえていましたが、しきりにさえずる鳥の鳴き声もあった。何の鳥かわからないが、陽気に一生懸命さえずる鳥・・声はヒバリにも近いが違う鳥。
しきりに鳴き続ける鳥の声をきいていると、犬を連れた初老の女性が現れた。犬はうす茶色で、かたちは芝のような犬ですが、それより二回りくらい大きい。背中に一本、たてがみの場所に毛の色が濃くなっている部分があった。女性は犬に「ここでいい?」と声をかけた。犬が地面にゆっくりと伏せて座り、女性もベンチに座った。
しばらくすると、小学校低学年くらいの女の子が走ってきた。左手に何かを大切そうに持っている。蝉の抜け殻を集めているようだった。私のすぐ右前の木にも抜け殻があったので、それを伝えると、女の子は素早く手中に収めた。
人は時に、多くを自分の物とすることに夢中になる・・それはあるいは、誰かにとって唯一のものである場合もあるだろうに・・私はもうそろそろ潮時かと感じ、その場を後にした。
かつてそこにいた人たちは今はいない。あるのは思い出と、新たな真実・・・ここで私の下手なポエムでも歌ってみようかと思いましたが、やめた。私はここにいて、少しずつでも自分自身になるしかない。