先日友人と安城の丈山苑にでかけてきた。丈山苑は石川丈山という人の生誕地にある、かつて丈山が住んでいたお堂を再現したものです。丈山は江戸時代初期に活躍していた人で、詩を読んだり文化人であったらしい。秋の連休、午前は天気が怪しかったが、丈山苑に着いたころにはいい天気になり青空が広がっていた。
丈山苑には、萩やヒガンバナ等、秋の花がいくつか咲いていた。お堂の中でお茶をいただくこともできる。裏庭の比較的人の少ないあたりに座を占め、お抹茶を頼んだ。小さな庭には木が植わっており、地面の野草も整えられている。お茶が出てくるのを待つ間、庭にある橋のような形の石の上を、一匹のトカゲが走っていくのが見えた。
お抹茶と一緒に出てきたお菓子は、角形で茶色と緑の縞模様で、白地の部分に少しだけ黄色い粉が鱗粉のようにあしらってあった。お茶を運んできた和服姿の女性が「野分です」と言った。それがお菓子の名前らしい。隣にいた友人が「この季節に吹く、野のすすきをわけて吹くような強い風のことだよ」と教えてくれた。
お茶をいただいた後で、建物内を見学してから外に出た。建物の庭の外周に小道があり、いろんな種類の木や花が植えてある。ぐるりと歩いて建物中央庭に向かう途中、今度は一匹のヘビに会った。それは赤と黒のブチ模様のある蛇で、細くて1メートルくらいあった。庭の柵にはばまれ、移動に困っているようすで、登るような形で身体を柵に沿わせていた。家に帰ってからパソコンで調べると、その蛇が「ヤマカガシ」であることがわかった。子どものころにもきいたことがあった名前だ。日本全国、田んぼの近い町にも見られる蛇らしい。性質は大人しいが、毒があるようだ。調べる過程で、日本人になじみの「青大将」「しまへび」についても、その名前と特徴について知ることができた。一応マムシについても特徴を調べておいた。こうして種類と特徴を知っておけば、次に蛇に会ったときには少しは安心でき、いいかと思った。
しかし結局、いくら名付けたからといって、蛇に会ったらびっくりして慌てるに違いない。分類したって、名付けたって、恐ろしいものは恐ろしいのだ。
最後に、この日の丈山苑訪問を記念して一句
亡き人らの 耳もかすめる 野分かな
たけはやの ぬくもりに咲く ヒガンバナ